コラム1『足の裏の「ほくろ」は危ない?』
足の裏の「ほくろ」は危ないとよく言われますが本当でしょうか?これは非常にたちの悪い皮膚がんである悪性黒色腫(メラノーマ)が足の裏にできやすいことと関係があります。実際に足の裏の「ほくろ」が悪性のメラノーマになることはまずありませんが、メラノーマの始まりは「ほくろ」とよく似ていますので注意が必要です。
メラノーマのはじまりは普通の「ほくろ」とは異なり、①中年以降に出てくる、②形がいびつである、③色に濃淡がある、④直径が7㎜以上ある、という特徴があります(下の図)。特に④の大きさはかなり重要なポイントで、2~3ミリの小さなしみは特に心配いらないことになります。
最近ではダーモスコピーという拡大鏡による診断が「ほくろ」とメラノーマの区別に威力を発揮しています。ダーモスコピーとは皮膚表面での光の乱反射を防止しながら皮膚の病変を10倍くらいに拡大して観察する機器です。これで拡大してみると足の裏は浅い溝が平行または格子状にきれいに並んでいます。「ほくろ」ではこの溝の部分に黒い色がつきますが(左図)、メラノーマのはじまりでは色素沈着は溝と溝の間の部分にみられます(右図)。
左図のような所見がはっきりしていれば、「ほくろ」に間違いありません。足の裏の「ほくろ」はありふれたものでメラノーマに変化することはまずありませんので、放置しても大丈夫です。一方、右図のような所見がはっきりしていれば、メラノーマの可能性が高いので直ちに切除します。
昔は足の裏の「ほくろ」はメラノーマの可能性を病理検査で否定するために切除するのが一般的でしたが、ダーモスコピーという新しい診断機器が普及して、肉眼的に「ほくろ」とメラノーマの区別がある程度自信をもってできるようになりました。メスを入れなくても良性か悪性かの区別が可能ですので、足の裏に気になる「ほくろ」がある場合は気軽に皮膚科を受診してください。
高田 実